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シド、「いちばん好きな場所」の、さらにその先へ。
熱狂のライブハウスツアー、いよいよスタート!
2018.09.03 CLUB CITTA'
遂にこの日がやってきた。
SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 「いちばん好きな場所 2018」の初日、9月3日の神奈川・CLUB CITTA’だ。
「いちばん好きな場所」とは、2008年のインディーズ・ラストツアーで初めて掲げられ、2010年のライブハウスツアーでも使われた、シドの原点を示す重要なタイトル。
結成15年、バンド史上最大規模の31公演に及ぶ大ツアーに臨み、三たびそのタイトルを掲げた4人の思いとは?
午後7時5分、期待、緊張、興奮が入り混じった会場内の空気は、すでに発火寸前だ。
「行こうか、川崎!」
ゆうやが叩き出す猛烈な2ビート、明希の重くうねるベース、Shinjiの高速ギターリフに乗ってマオが叫ぶ。
8月に出た新作ミニアルバム『いちばん好きな場所』の1曲目を飾った「VOICE」は、生で聴くとよりエモく激しく、サビで一気に空間が広がる感触がたまらなく気持ちいい。
同じく新作からの「reverb」は、エレクトロ・サウンドを大胆に取り込んだヘヴィなメタリック・ダンスロックで、前作『NOMAD』収録のメタルチューン「XYZ」と並べて聴くと、興奮が倍増する。
「頭からぶっ飛ばしていくぞ!」と叫び、マオが客席最前列に両足を突っ込んで歌っている。
差し出された何本もの腕でマオが宙に浮いているような、その光景が一枚の美しい画に見える。
「ここが俺たちとお前たちの、いちばん好きな場所です。待った?俺も待ちまくった。やっと今日が来た」(明希)
「18年前にここに立ったことがあるけど、お客さんが3人しかいなかった。でも俺はガンガン頭振ってた。3人だろうと1000人だろうとやることは一緒です」(Shinji)
「緊張してたでしょ?俺も緊張した。でもそろそろ、ちったー(ちょっとは)ほぐれてきたんじゃないの?」(ゆうや)
セットリストは、新作『いちばん好きな場所』を中心に、4月にリリースされた『SID Anime Best 2008-2017』の楽曲にも光が当てられる。
『劇場版アニメーション「黒執事 Book of the Atlantic」』の主題歌になった「硝子の瞳」は、スピード感と哀愁とポップさが絡み合うシドの得意技だ。
とにかくこの日のシドは力強く演奏し、しっかり歌うことに専念して、セットも含めて余計な装飾は一切ない。
これがライブハウス、シドの原点だという意識がビンビンに伝わってくる。
マオの表情も、いつも以上に笑顔いっぱいだ。
この日のハイライトをいくつか挙げるなら、その一つは間違いなく「その未来へ」だった。
『いちばん好きな場所』の3曲目に置かれたバラードは、ライブハウス空間の中で、想像を超える豊かな広がりを聴かせてくれた。その未来へ、あなたへ、繋げよう。この歌はきっと、ツアーのアンセムになる。
そう確信させる、真心のこもったパフォーマンス。
「昔はセットリストに、いろんな曲を入れて盛り上げようとしていたけど、今は“流れ”を大事にしてる。並べた時にどう響くかを、それが重要だと思うから」
マオの言葉通り、アッパーとスロー、激しさと柔らかさの区別だけではなく、流れの中で一つの大きな画を描いてゆく、パズルのような選曲が面白い。
だからこそ、「マスカラ」のように懐かしい曲も、サイケな妖しさと解放感を兼ね備えたダンスロックとして、耳に新しい。
ミニアルバムからの「ラバーソール」のような新しい曲も、屈託なくシンプルで明るいロックチューンとして、心に映える。
15年続けたライブバンドの定番を盛り込みつつ、その先の未来へ向け、新しい刺激を生み出す。バンドの狙いは明確だ。
やはり初日の緊張感があったのだろう。アンコールは本編とは違い、かなりリラックスした4人の姿が見られた。
メンバー紹介のタイミングを間違えてゆうやとマオが笑い合ったり、マオが観客に「どうやるんだっけ?」と聞いて場内が爆笑に包まれたり。
かっこよく決めたシドもいいが、ちょっとずっこけた飾らない素顔のシドもいい。
15年かけて彼らは、どちらの顔にも磨きをかけ、それが多くのファンを引き付けてきたのだと、幸福感いっぱいの客席を見ながらそう思う。
「この長いツアーのグランド・ファイナルを、来年3月、横浜アリーナでやります。横浜アリーナは、「dead stock TOUR 2011」の時に、震災で一回飛ばしちゃってるから、絶対にやりたかった。しかも震災の前日の3月10日。運命的なものを感じます」
突然の発表に、すさまじい歓声と拍手が湧き上がる。これはリベンジではなく、願い。
シドに関わるすべての人の思いは、きっと同じだろう。
そしてこの日、最後に披露されたのは、ミニアルバムのタイトル曲『いちばん好きな場所』だった。
弦楽器をフィーチャーした雄大なロックバラードは、「その未来へ」と並ぶツアーのアンセム候補だ。
Shinjiのギターソロの、震えるような気持ちのこもり方が普通じゃない。
少し前のMCで明希は「違うバンドじゃないの?っていうぐらいになって帰ってくるから」と言ってくれたが、ツアーが終わる頃、バンドが、そしてこの歌たちがどれだけ成長するか。その時が今から楽しみだ。
「15年経っても、ライブハウスが「いちばん好きな場所」だと言える俺たちを、素敵だと思う。これからも、そう思えたら素敵だよね」
マオの最後の挨拶に、15年の自信と、ファンへの愛情がにじみ出る。
まずはツアーを完走し、次の目的地、2019年3月10日の横浜アリーナへ。
1本1本のライブに思いを積み重ね、15周年のストーリーはまだまだ終わらない。
取材・文◎宮本英夫
撮影◎今元秀明
- 01.
- VOICE
- 02.
- reverb
- 03.
- XYZ
- 04.
- 蜜指~ミツユビ~
- 05.
- cosmetic
- 06.
- 嘘
- 07.
- 硝子の瞳
- 08.
- V.I.P
- 09.
- その未来へ
- 10.
- マスカラ
- 11.
- hug
- 12.
- ラバーソール
- 13.
- MUSIC
- 14.
- プロポーズ
- 15.
- Dear Tokyo
- 16.
- 眩暈
- En1.
- NOMAD
- En2.
- 循環
- En3.
- 夏恋
- En4.
- いちばん好きな場所