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2018.11.21 マイナビBLITZ AKASAKA

結成15周年のアニバーサリーイヤーを邁進中のシドが、ミニアルバム『いちばん好きな場所』を携えて9月よりスタートした全国ツアー〈SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 「いちばん好きな場所 2018」〉のファイナル公演を11月21日東京・マイナビBLITZ AKASAKAで行なった。この「いちばん好きな場所」というタイトルは、彼らが10年前に開催したインディーズラストツアーと同タイトルで、メンバーにとってもファンにとっても思い入れの深い言葉。彼らがファンと共に歩み育んできたこのライブ空間こそが“いちばん好きな場所”なのだと言い切るような清々しさと愛に満ちたステージだった。

大歓声の中、SEに合わせて1人ずつステージに登場したメンバーが1曲目に放ったのは、イントロから躍動感のあるゆうやのドラミングとShinjiのギターリフが炸裂する「VOICE」。開放感のある明希のベースラインも心を躍らせる。「一人残さず 連れていこう」「世界でいちばん 熱い夜にしよう」——シドの宣誓とも言えるようなメッセージを、フロアの一人一人に響くようにマオは柔らかな眼差しで、大合唱するフロアを見渡しながら力強く歌い上げた。希望に満ちた鮮やかなサウンドスケープを描く「VOICE」から、一転して拳を突き上げる骨太なロックチューン「reverb」「XYZ」へと続く。「今日はファイナルです。駆け抜けましたよ、ここまで。ただいま。今夜も一緒に素敵な夜にしましょう」というマオの言葉を合図に、ジャジーなグルーヴの「蜜指〜ミツユビ〜」、その音像を残したまま「KILL TIME」と、高度なバンドアンサンブルで聴かせる。15周年に突入してからライブ三昧だったシドは、このツアーを経てさらに結束力を増した。それは信頼度の高い演奏やステージパフォーマンスからも読み取れる。中盤の「V.I.P」では、3人の演奏が終わった後もなお声を響かせるマオの姿が印象的だった。自然と会場からも拍手が湧き上がる。「ごめんね、ちょっと最後伸ばしすぎちゃった」と自ら笑いを誘ったマオ。「それぐらい今日は気合い入ってますよ」と言うと、ゆうやは「濃かったね。15周年の俺たちだから31公演に意味があった」と振り返り、明希は「とても心が幸せになりました。ありがとうございました」と感謝の言葉を述べた。「15年経って、結成した頃より仲がいいんじゃないかって思う」と言う明希の言葉を受けて、ツアーと関係ない話を始めるShinjiを横目に「まとめますと俺たちは“仲良シド”ってことで」とマオが笑いながらまとめると、「この曲はシドにとってすごく大切なバラードになりました」と、アイリッシュなイントロから始まる「その未来へ」へ。地に足のついたテンポ感と共に、シンプルなメロディと言葉がダイレクトに心を打つ。4人のコーラスから、やがてフロアを巻き込んだ大合唱へと広がっていく様は感動的だった。甘くてちょっぴりシニカルな「刺と猫」では、マオの声だけを残したラストの「愛してる」のフレーズとチュッと口づけの音が会場を悩殺。余韻そのままに、香り立つようなバンドサウンドと、柔らかなマオのヴォーカルが映えるミディアムナンバー「hug」を披露。「この曲を歌う時は、みんなの気持ちをしっかりとハグするように、抱きしめるような気持ちで歌っているから」と言葉を添えた。終盤の「MUSIC」からラストに向けてアッパーチューンを畳み掛ける。開放感のある「ラバーソール」では「オーイエー!」の大合唱が一体感を生み、「Dear Tokyo」ではどんどんと高まっていくテンションで、曲中マオが「ずっとずっとずっとずっとずっとずっと会いたかったよ!」と叫んだ。そして「プロポーズ」「眩暈」とスリリングなナンバーで本編を締めくくる。勢い余ってマイクスタンドを引き倒す明希、漢み溢れる太い声で煽るマオ。ヘドバンで髪を振り乱すフロア。オープニング時とは真逆のような光景だが、どれだけ充実した時間を一緒に過ごしたのかが分かるこの光景に思わず笑ってしまった。

「これからの季節にぴったりなこの曲を持ってきました」と、アンコール1曲目で披露したのはバラードナンバー「ホソイコエ」。Shinjiのアルペジオと情感のこもったマオの歌が切なく響く。余韻を噛みしめるように静まり返る会場に「歌った後、みんながシーンとなる感じ、嫌いじゃない」と微笑むマオ。そして「夏恋」「one way」と再び会場を盛り上げた後、「4人ともミュージシャンだし、その前にバンドマンだから、ライブのために生きてます。本当に大切な大好きな場所です。その幸せな気持ちを心に噛み締めながら歌にします」と、ラストナンバー「いちばん好きな場所」へ。ストリングスの音色と共にミラーボールの光が会場を優しく包む。15年分の愛を織り込むように紡いでいく4人の音。みんなのいちばん好きな場所は、多幸感に溢れていた。鳴り止まない拍手と歓声の中、マオの思いのこもった言葉がステージを締めくくった。

「俺たちのいちばん好きな場所は、みんなの(胸を指して)ここにしっかりと残ったと思うから。俺たちはいつでもこの場所を用意して、音楽を続けていけたらと思います。みんな帰ってきてね。俺はみんなが心の底から大好きです」。

このツアーで改めて“いちばん大切な場所”を噛み締めたメンバーは、その思いを一つも残すことなく“SID 15th Anniversary GRAND FINAL”が開催される2019年3月10日(日)横浜アリーナへと連れていくことだろう。

取材・文◎大窪由香
撮影◎今元秀明

01.
VOICE
02.
reverb
03.
XYZ
04.
蜜指~ミツユビ~
05.
KILL TIME
06.
螺旋のユメ
07.
ASH
08.
V.I.P
09.
その未来へ
10.
刺と猫
11.
hug
12.
MUSIC
13.
ラバーソール
14.
Dear Tokyo
15.
プロポーズ
16.
眩暈
 
 
En1.
ホソイコエ
En2.
夏恋
En3.
one way
En4.
いちばん好きな場所